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title: "枕元のメモ帳、あるいは音声AI"
url: "https://blog.101ta28.com/posts/bedside-notebook-or-voice-ai/"
language: "ja"
description: "ひらめきを音声AIへ話し、書き起こしを別の会話で整理することで、未来の自分へ渡せる形にする方法を考えます。"
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# 枕元のメモ帳、あるいは音声AI

> ひらめきを音声AIへ話し、書き起こしを別の会話で整理することで、未来の自分へ渡せる形にする方法を考えます。

枕元にメモ帳を置いておくとよい、という話がある。
眠りに落ちる直前のひらめきを、朝まで逃さず残すためだ。

ただ、メモ帳に書きつけた言葉は、思い浮かんだものと同じなのだろうか。

私は以前、[思考の重ね合わせと技術記事が書けない人間について]({{< ref "posts/layered-thinking-and-struggles-with-writing-tech-articles" >}})という記事を書いた。
一つの考えを文章として取り出すと、その周りにあった別の考えが抜け落ちる。
頭の中では確かにつながっていたはずなのに、言葉にした途端、少し違うものになってしまう。

それでも、言葉にしないわけにはいかない。
書き留めなければ他人には伝わらず、未来の自分にも認識されないまま消えていく。

であれば、最初から整った文章を書こうとしなくてもよいのではないか。
フィラーや脱線を含め、とりとめのないまま話してしまえばよい。
現代の枕元には、メモ帳の代わりに音声AIを置ける。



## まとまらないまま話す

文章を書こうとすると、最初の一文を考える必要がある。
どこから説明するか、何を残すか、どの順番なら伝わるかを決めなければならない。
ひらめきを残したいだけなのに、その場で小さな編集作業が始まってしまう。

音声AIなら「あの」や「ええと」を挟み、途中で言い直しながら話を続けられる。
本題と関係があるか分からない話へ逸れても、あとから戻ればよい。
書き始めるよりも前の、まだ形の定まっていない思考を外へ出しやすい。

ここで音声AIに求めるのは、考えをきれいにまとめることではない。
まずは録音係として、話した内容を受け止めてもらう。

## Markdownを挟んで会話を分ける

ひととおり話し終えたら、音声モード側で次のように依頼する。

> 今までの会話をMarkdownとして書き起こしてください。

書き起こされた内容は、そのまま読むか、フィラーだけを取り除いて読み返す。
言い直しや矛盾まで整えてしまうと、記録ではなく整理が始まるためだ。

そのMarkdownを別のセッションへ貼り付けるか、ファイルとして添付する。
そこで、あらためて次のように頼む。

> 上記の内容をもとに、対話しながら整理したいです。

同じ会話の中で整理まで続けないのには、三つの理由がある。
話す時間と整理する時間を分けたいこと、音声でのやりとりに含まれた不要な前提を持ち込みたくないこと、整理に使う文脈を必要な材料へ絞りたいことだ。

役割も変わる。
最初のセッションは録音係である。
次のセッションでは、音声AIと書き起こしを読み返す。
完成した文章を一度で作らせるのではなく、何を残すかは対話しながら決めていく。

## 言語化によるずれを引き受ける

この手順を踏んでも、最初に抱いていた思いをそのまま保存できるわけではない。
思いは話した時点で言葉になり、書き起こした時点で文章になり、対話した時点で解釈される。
どこまでが自分の思考で、どこからが音声AIの解釈なのかを、完全には区別できない。

だからといって、言語化しなければ思いを損なわずに済むわけでもない。
言葉にならなかった思いは、他人だけでなく未来の自分にも理解できず、存在していたことすら認識されないかもしれない。

整理前の書き起こしを読むのは、元の思考を完全に復元するためではない。
音声AIが示した解釈を現在の自分が読み、それを自分の考えとして受け入れるかを判断するためである。
未来へ渡す内容を選べるのは、今ここにいる自分しかいない。

## 話し始めるまでを短くする

枕元のメモ帳は、手を伸ばせばすぐ書ける場所にあるから役に立つ。
音声AIも同じで、思いついてから話し始めるまでの操作は少ないほうがよい。

対応するiPhoneなら、アクションボタンとショートカットを使って音声モードを呼び出す方法が考えられる。
もちろん、誰もがiPhoneを使っているわけではない。
ウィジェットやアプリのショートカットなど、端末に合った入口を用意すればよい。

大切なのは特定の端末や起動方法ではなく、考えを整え始める前に話せることである。
メモ帳を開くように音声AIを起動できれば、ひらめきを残すまでの負担を減らせる。

## 現代の枕元に置くもの

音声AIは、思いを歪めずに保存する道具ではない。
そもそも、言葉にする以上は何かが抜け落ち、何かが付け加わる。

それでも、とりとめのない話を受け止め、書き起こしとして残し、別の対話で整理できる。
アイデアの書き留めから解釈までを支えるという意味で、音声AIは現代の枕元のメモ帳になり得る。

最後に残るのは、ひらめきそのものではない。
現在の自分が、未来の自分へ渡してよいと判断した解釈である。
