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title: "進める力"
url: "https://blog.101ta28.com/posts/moving-things-forward/"
language: "ja"
description: "改善したいことを小さく形にして見せると、相談や判断の材料が増える。PDF加工ツールや議事録作成ツールの試作を通して、物事を進める力について考えた。"
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# 進める力

> 改善したいことを小さく形にして見せると、相談や判断の材料が増える。PDF加工ツールや議事録作成ツールの試作を通して、物事を進める力について考えた。

「やっちゃいました」で物事を進める力が欲しい、と思っている。

こうすれば少し楽になる、ここを改善できるとよさそうだ。そんな考えがあっても、周囲へ話す前にしまい込んでしまうことがある。
確認の手間や手続きにかかる時間、周囲の意見を考えるうちに、消極的になることもあるだろう。

本人には改善したいことがあるのに、外からは「やりたいことがない」ように見えてしまう。

そんなとき、小さく形にしてから「こんなの作ってみたんですけど」と見せる方法がある。
私にとっては、実物を見せるほうが話しかけやすかった。見せたことをきっかけに、知らなかった困りごとや仕事の事情を教えてもらうことも増えた。



## PDFを結合する道具から、仕事を知る

PythonでPDFを加工するツールを作ったことがある。
そのうち、連番のPDFファイルを順番に結合する機能を見せたとき、大量のファイルを挿入して保存する作業が手間だった、という話を聞いた。

連番にしたPDFファイルを相手から受け取り、私のPCで結合して返すことになった。
私が結合を引き受けるので、仕事は増えている。
仕事が増えることを、そのままメリットとは言いにくい。

ただ、そのやり取りの中で、許可を取ったうえで、どんなファイルなのか、内容について聞く機会が増えた。
PDFを結合する道具を見せなければ、知らなかったであろう情報や、教えてもらえなかったであろう知識がある。

自分の手間を減らすために作ることもある。
HEIC画像をJPEG画像へ変換する道具や、連番のPDFを結合する道具などだ。

自分が欲しくて作っていたものを、周囲も欲しがっていたことがある。自分が面倒に感じている作業は、誰かにとっても面倒なのかもしれない。

## 実現の目処があると、話しかけやすい

改善案があっても、周囲には「なくても困らないが、あると便利」くらいに見えていることがある。
ほかに優先すべき仕事があれば、その案を仕事として任せるほどではない、と判断されるのも自然だと思う。

そこに、すでに動くものがあると、話せる内容が変わる。
何ができるかを見たうえで、「ここを少し改善すれば使えそうだ」と判断してもらえることがある。
必要性は感じていても、実現できるか分からなかったものなら、動いている様子が検討を進める材料になる。

私自身も、実物を見せながらなら話しかけやすかった。
言葉だけでは共有しにくいイメージも、実物があれば相手に見てもらえる。
使う場面を思い浮かべてもらえれば、足りない機能や、別の使い道についても話せるだろう。

もちろん、試作品が動いた時点で、実際の業務に導入できると決まるわけではない。
試せた範囲と、まだ手をつけていない部分を伝える必要がある。
それでも、実現の目処が少し見えるだけで、周囲が判断できることは増えると思っている。

## 作ってから分かった、使える場面の違い

会議の録音を文字に起こし、要約や議事録を作成するWebシステムも作った。
見せてみると、対面で行う会議が多いと分かった。
録音の可否によって、ツールを使える場面も限られていた。

録音できる会議では活用されている。

ただ、オンライン会議がどのくらいあるのか、実際にどのような場面で使えるのかは、作る前に相談しておくべきだったと思う。
録音を使う仕組みが動いても、使いたい会議で録音できるとは限らない。

周囲の事情や過去の経緯を知らずに作れば、二度手間や手戻りになることもある。
以前あった機能が削除されたのなら、その理由によっては同じものを作っても使われないかもしれない。
試作する前に聞けることは聞いておきたいし、見せた後に分かった事情から、作る範囲を変えることも必要になる。

## 自分が困らない粒度で作る

先に作るにも、時間はかかる。
私は、画面を作る、ひとつの処理を実装する、といった、できたものが見えて時間もかかりにくい単位に区切って試すことが多い。
短い単位を何度か繰り返して、少しずつ形にしている。

日々の業務で使うPDF加工や画像変換のような小さな道具なら、見た目はさておき、機能として使えるところまで作る。
それでも、長くて30分から1時間くらいを目処にしている。
手間を減らすための道具に、時間をかけすぎても困る。

周囲に見せる前提なら、さらに「実装を頼まれても、自分が困らない粒度」を考える。
今の仕事に加わっても引き受けられるか、既存のシステムや業務の進め方を大きく変えずに済むか、という目安だ。

たとえば、画面の変更で収まるものと、ほかの画面にも影響する処理やデータベースの見直しが必要なものでは、引き受ける範囲が違う。
作るときの手軽さだけでなく、使うことになった後の負荷も考えておきたい。

試すのは、自分の裁量で扱える範囲を基本にしたい。
その範囲を超える案も、提案として見せる段階では、本番環境や今動いている仕事に影響を出さない形にする。
実際に使うかどうか、どのように取り入れるかは、試作品を材料に周囲と判断していく。

「こんなの作ってみたんですけど」と実物を見せれば、どこで使えるか、何が足りないかを具体的に話せるようになる。

自分が引き受けられる範囲で、周囲が判断できる材料を作って持っていく。
改善したいという気持ちを、相談できる提案にまで進める。
それが「進める力」と言えるのではないか。
