前置き

X(旧Twitter)上で似た内容のポストを見かけた。フルリモートと明言していた会社が、出社を求めるようになったという内容だ。

いわゆる「地方」で仕事をしていた人は大変だというポストを眺めつつ、「地方」大学で働く者として、エンジニアとして思うことがあり記事を書いている。

都市圏と地方、どちらが良い・悪いという話ではない事を前提に読んでいただけると幸いだ。

得られる情報量に差はないが…

まず、個人で得られる情報量について書きたい。

インターネットの発達・ChatGPTを始めとするAIの普及で、得られる情報量に差はなくなったと感じる。

この点では、都市圏と地方の間に差はないだろう。

しかし、個人で得られる交流関係はどうだろうか。

都市圏ではカンファレンスや交流会、ハッカソンといったイベントが毎日のように開かれている。

参加者も社会人から学生まで、様々な背景を持つ人たち多い。

地方ではどうか。私の知る範囲では、月に数回イベントがある程度だ。

そして、地方では参加する人も偏りやすい。人口の差は大きいのだ。

同期コミュニケーションという点では、地方は不利だ。

都市圏と地方で得られる情報量に差はない。

ただ、得られる交流関係には圧倒的な差が生まれやすいと感じる。

交流関係と言えば簡単だが、根は深いと感じる。

イベントの参加は、「きっかけ・チャンス」を生みやすい。

「勉強会で知り合った人がきっかけで、キャリアアップを目指し転職した。」

「ハッカソンに参加し、作成したプロダクトがきっかけで起業した。」

「きっかけ・チャンス」の母数が異なることで、都市圏と地方の差が生まれると言えるだろう。

心の余裕は人によって異なる

都市圏では部屋が狭く、満員電車に揺られ「心の余裕がない」という表現を聞くことが多い。

地方ではどうか。

金額の割には部屋も広く、電車もそこまで混んでいない。そもそも車前提の地域もある。

「部屋も広いし、電車も混んでいない!心の余裕を持てる!!」と思う人もいるだろう。

ただ、心の余裕は人によって異なる。

収入金額を心の余裕と思う人は、高収入が期待できる都市圏を目指すだろう。

競争の少なさを心の余裕と思う人は、都市圏ではプレッシャーを感じやすく地方を目指すかもしれない。

通勤時間ではどうだろうか。日常の刺激と選択肢の数ではどうだろうか。生活環境ではどうだろうか。

区分すれば3つ程度になるだろう。

  1. 経済的余裕
  2. 時間的余裕
  3. 精神的余裕

比較したとき、現状の最適解は都市圏なのだろう。

求めるものは刺激か安定か

私が所属している大学は、「地方」に存在する大学だ。

日本全国から入学者がいるが、都市圏から来る人もいれば、そうでない人もいる。

就職の時期になり、地元を選ぶ学生が多いのかというとそうでもない。

私の見聞きする範囲で、エンジニアとして就職する学生は都市圏、特に東京に行くことが多いように見える。

理由を聞くと、給与の高さやイベントの多さ、新技術の導入など、様々な意見があった。

逆に地方を選択した学生は、家族がそこに住んでいる・自身のスキル的に選んだ企業がベストだったという意見が多かった。

就職を決める若い時期、求めるものは刺激になるのだろう

地方と都市圏のインターンシップは異なる

エンジニア、特に情報系ではインターンシップが早期化している。

早期化に思うところはあるが、インターンシップを募集している会社を見ると都市圏が多い。

学生と話をすると、地方と都市圏のインターンシップは別物に聞こえた。

学生から見える魅力が違うのだ。

日給が低く、スーツを着て出社するインターンシップもあれば、ちょっとした社会人の月給より高く、服装・髪型自由のインターンシップもある。

学生が求めるものとして、学べる内容・報酬・働き方の自由さなどがあげられるだろう。

これだけ見ると都市圏バンザイだが、「見せ物・競争の場」として考えると話が変わる。

地方の企業は情報発信力や、スタートアップ的な柔軟性に大きな差がある。

「見せ物」としての宣伝が得意じゃないことも多々あるはずだ。

地方のインターンシップも内容を見ると面白いものが多い。

地方創生を主としたものや、小規模で経営陣と話をしやすいなどなど…

また、都市圏のインターンシップは「競争の場」になりやすい。

中々褒められる事ばかりでもないのだ。

都市圏が最高!とは限らない

今までの内容として、都市圏が最高のように書いてみた。

しかし、地方の良さはある。

例えば、エンジニアとしての希少性があげられる。

普段の作業や考え方が、場所によっては特別なスキルに見えることもあるはずだ。

実際、特別なスキルではある。全ての人がコンピュータに詳しいとは限らない。

他にも、家族や生活を重視するキャリアの時も地方は強いだろう。

都市圏では仕事中心になりがちだ。悪いことではないが、持ち家で家族と生活するならば地方は最適だ。

更に言えば、情報過多を避けやすいということもある。

SNSを中心に、成功体験を見ることが多い。都市圏となれば尚更だ。

勉強会やイベントに参加するたび、「自分も追いつかなければ」という思いに駆られることもあるはずだ。

その思いが成長のきっかけになるなら問題ない。ただ、焦りや不安になるなら黄信号だ。

自分のペースで学習し、成長するのであれば地方という選択肢は悪くないと思う。

終わりに

最終的に自身が大切にする価値が定まれば、自ずと向かう場所は決まるだろう。

刺激に溢れた生活を大切にするのか、安定した道を大切にするのか。

自己実現を目指し生活するのか、家族などの他者を重視するのか。

きっと、都市圏と地方のエンジニアの差は少ない。

差があるのは大切にする価値の違いなのだろう、という終わり方にさせていただきたい。