作りたい人が作れる時代、エンジニアは何を求められるのか
AIが発展する現代、アプリやツールを作ることは、エンジニアだけのものではなくなっている。
例えば、ChatGPTにやりたいことを伝えると、仕様やプログラムが出てくる。
ノーコードツールを使えば、仕組みやUIも数クリックで作成できる。
ちょっとしたアイデアや改善点があれば、専門外の人でも、それを形にできるようになった。
そんな時、エンジニアの価値はどうなるのか。
技術力そのものが価値になりにくい時代、求められるものは「作る理由・想い」なのかもしれない。
技術だけでは差がつきにくい時代。
それでも、何かを作る意味や価値はあると信じている。
そんな問いから見えたものが、
意欲駆動開発(Motivation-Driven Development) という考え方だ。
意欲駆動開発とは何か
「どう作るか」を工夫する開発手法はいくつもある。
だが、「なぜ作るか」に目を向けると、技術ではなく、動機や感情があるはずだ。
自分なりに、意欲駆動開発という言葉の定義を行った。
意欲駆動開発とは、仕様や技術要件ではなく、作りたい動かしたいという「思い」を起点とした開発スタイル。
「渋々やる」ではなく、「必要だと思ったからやる」という、自発的なもの。
意欲駆動開発に変種を作るのであれば、
- 内からの衝動による開発 (自己欲求タイプ)
- 毎日使うツールの使いづらさにイライラして、自作の改善版を作った (怒り駆動)
- 面白そうだから、深夜に黙々とコードを書いた (好奇心駆動)
- 「こう動いたら気持ちいい」という感覚を形にした (快感・審美駆動)
- 誰かのための開発 (他社貢献タイプ)
- 身近な社会課題に向き合い、アプリで解決を試みた (使命感駆動)
という形に分類できる。
つまり、“何をどう作るか"より前に、“なぜ作りたいのか"が存在している。
感情や価値観が技術要件やタスクの前にあるのだ。
このような開発は、非効率で見通しもなく、評価がされることも少ない。
それでも続けられるのは、動機そのものが報酬となりうるからだ。
そして、AIの発展により技術的障壁が下がった。
より多くの人が、「意欲」を起点として、「作ること」にチャレンジできるようになったのだ。
意欲が生む創造性と、変化するエンジニアの価値
意欲を原点にした開発に注目した理由、
それは、創造と革新が、技術ではなく“動機”に移りつつあると感じたからだ。
実際、ユニークなプロダクトやサービスは、違和感や止められない衝動といった、強い想いが隠れている。
- 「誰かが直さないなら、自分で直す」
- 「誰かが作るのを待っている暇がない」
- 「これがあることで、喜ぶ人が複数いるはずだ」
このような"思い"を持つ人が、技術というハードルを乗り越え実装した時、既存の枠組みに無かったものが生まれる。
意欲こそが創造性を生む原動力となりうるのだ。
AIの発展により、プログラムを書く・仕組みを整えるといった作業は、特別性を失いつつある。
つまり、技術力そのものが"優位性"ではなくなりつつあると感じた。
エンジニアである、というだけでは差別化が難しい。
そんなとき、これからを生きるエンジニアに求められるものは何か。
- 誰かの思いを引き出し、形にする「翻訳者」としての力
- アイデアを現実に落とし込む「設計者」としての力
- 開発することによる、倫理や社会への影響を考える「責任ある実装者」としての力
AIが"どのように作るか"を導いてくれる今こそ、
エンジニアには「何を、なぜ、どのように届けていくのか」という視点が求められるはずだ。
だからこそ、意欲を持つ人の創造性と、それを支えるエンジニアの関係性が変化する。
「作る人」と「作れない人」という対立ではなく、
「想いを持つ人」と「技術を持つ人」という交差した開発のあり方になるのではないか。
それは、技術と感情が補い合う新たな関係性なのかもしれない。
開発は、特別なものではなくなった
開発というものは、エンジニアを主とした仕事だった。
設計や実装、運用を担うには、専門的な知識や経験が不可欠だった。
しかし、それも変化している。
AIの進化によって、専門外の人でも「作る」に手が届くようになった。
やりたい事を言語化できれば、プログラムも設計も、ある程度AIが補ってくれる。
ノーコードツールなどの開発環境も整い、「思いついた人」が「作る人」になれる。
一方でエンジニアの役割は終わらない。
むしろ、「どのように作るか」ではなく、「何を、なぜ作るか」を支える存在として価値が問われていくだろう。
- 強い想いを持った誰かと、技術で応えるエンジニア
- 技術を超え、意味や影響を考えられる存在
- 自身の動機と向き合い、何を届けたいのかを問い続ける専門職
技術力が万能でなくなるとき、「思いの力」が差を生む時代になると感じる。
「誰が、なぜ、それを作ったのか」
この問いにどれだけ向き合うことが出来るか。
それが、開発の価値を決めていくのではないだろうか。
技術に支えられた、自由に創造できる時代。
「作る力」は誰の中にも存在し、「作りたい気持ち」が開発の出発点となる。
意欲を持って生きる。
それこそが、自分らしい何かを生み出し、誰かと繋がるための最初のステップとなるはずだ。